第1回JASTIPシンポジウム「オールジャパン体制の構築に向けて」
内容
概要
わが国にとってASEANは、政治・経済のみならず、科学技術や研究教育においても重要なパートナーとなりつつあります。日ASEANでは、数多くの共同研究や教育連携が実施され、それぞれの分野では世界に誇る成果を上げてきました。一方、それらが個々に企画・運営されてきた結果、事業終了後の持続的な関係の維持が困難であるとともに、日ASEANの協力が総体として何を生み出してきたのかを見えづらくしています。このような認識のもと、文部科学省と科学技術振興機構(JST)は「国際共同研究拠点」を企画し、本学からの提案「日ASEAN科学技術イノベーション共同研究拠点‐持続可能開発研究の推進」(平成27年~平成32年)が採択されました。
本学としては、本事業により、日ASEAN協力による研究推進を加速化させるとともに、ASEANとの科学技術や研究教育において、機関や事業の壁を超えて連携を図るための体制構築に向けた議論を喚起し、個々の事業の効率的な運営と効果的な成果の活用に貢献したいと考えています。そこで、日ASEANの共同研究や教育連携に実績のある大学や研究機関に加えて、学術政策を司る文部科学省、JST、日本学術振興会(JSPS)等、ASEANの現場で日ASEAN関係の強化に取り組んでおられる在外公館や実務組織のみなさまにご参集いただき、日ASEANの科学技術・研究教育事業の限界や問題点と効果的な支援体制について情報共有と意見交換を促進し、わが国が必要としているオールジャパン体制とは何か、その中で本事業は何をなすべきかについて議論を深めたいと考えています。
本年12月には、人口6億人を超えるASEAN経済共同体が結成されます。ASEANにおけるわが国の国際的な立場をさらに確固たるものとし、ASEANの成長力をわが国の新たな成長の駆動力とすることは、わが国にとって愁眉の課題です。そのなかで、科学技術や研究教育が重要な役割を担うためには、その成果を社会のイノベーションにつなげるとともに、その効用を社会に対してより明確に示す必要があります。
第1回JASTIPシンポジウムでは、研究推進を担ってこられたみなさまや科学技術イノベーションの政策立案者、ASEANの現場において科学技術協力を実践されてきた実務者・研究者より話題提供を頂き、オールジャパン体制の構築に向けた議論の口火を切りたいと思います。
本シンポジウムの趣旨をお汲み頂き是非、皆様のご参加・協力をお願いする次第です。
河野 泰之
プロジェクトリーダー
京都大学 東南アジア研究所
日時
場所
プログラム
12:30 – 13:00 | 受付 |
13:00 – 13:20 | 趣旨説明:日ASEAN科学技術イノベーション共同研究拠点 |
13:00 – 13:05 | 来賓あいさつ 山田浩貴 (文部科学省 科学技術・学術政策局 科学技術・学術戦略官(国際担当)付 国際戦略室・企画官) |
13:05 – 13:15 | 戦略的国際協力研究イノベーション共同ラボタイプ 趣旨説明 本藏 義守(科学技術振興機構・研究主幹) |
13:15 – 13:30 | 日ASEAN科学技術イノベーション共同研究拠点 (JASTIP) 趣旨説明 河野 泰之(プロジェクトリーダー・京都大学東南アジア研究所 教授) |
13:30 – 13:50 | 基調報告:日ASEAN科学技術イノベーション政策 |
13:30 – 13:40 | 日本の行政及び科学技術イノベーション政策 真子 博(内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付・参事官補佐) |
13:40 – 13:50 | 第70回 ASEAN COST会議 荒川敦史 (科学技術振興機構 経営企画部 総括グループ 調査役) |
13:50 – 14:40 | 報告:日ASEAN科学技術イノベーション:ASEANの現場から |
13:50 – 14:00 | JICAにおける工学人材育成事業との連携(SEED-Netを中心に) 宮田尚亮(国際協力機構人間開発部・企画役) |
14:00 – 14:10 | e-ASIA 多国間共同研究プログラム コーディネーターの現場から 岸田絵里子(科学技術振興機構/e-ASIA事務局, e-ASIA スペシャル・プログラム・コーディネーター) |
14:10 – 14:20 | タイにいて感じる日本のプロジェクト:問題点と解決へ向けて 関 達治(キングモンクット工科大学トンブリ校・学術顧問) |
14:20 – 14:30 | タイ国立研究機関から見た 日タイ科学技術協力のあり方 行宗 安友(タイ国立科学技術開発庁/金属・材料技術センター・コーディネーター) |
14:30 – 14:40 | 日インドネシア科学技術協力の課題と今後の展望 大崎 満(北海道大学農学研究院・教授) |
14:40 – 15:00 | 休憩(コーヒーブレイク) |
15:00 – 17:30 | 総合討論:オールジャパン体制の構築に向けて |
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18:00 – 20:00 | 懇親会 |
会場:稲盛財団記念館 |
開催報告
JASTIPは、本事業の課題と展望を明確にするため、2015年12月14日、京都において第1回JASTIPシンポジウム「オールジャパン体制の構築にむけて」を開催しました。ASEAN諸国で持続可能開発に関わる研究者、日ASEANの科学技術外交に関わる研究者や政策担当者、日ASEANの研究連携を推進する実務家ら約70名が一堂に会し、日ASEAN科学技術協力におけるオールジャパン体制の構築にむけた議論を行いました。
シンポジウムは柴山守 京都大学ASEAN拠点長の司会のもと、山田浩貴 文部科学省国際戦略室・国際企画官による来賓挨拶で始まり、本藏義守 JST・研究主幹および河野泰之 プロジェクトリーダー(本学東南アジア研究所教授)による本プロジェクトの趣旨説明が行われました。
趣旨説明に引き続き、真子博 内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付・参事官補佐および荒川敦史 JST経営企画部総括グループ・調査役より日ASEAN科学技術イノベーション政策に関する基調報告が行われました。続いて、宮田尚亮 国際協力機構人間開発部・企画役、岸田絵里子 JST/e-ASIA事務局・スペシャルプログラム・コーディネーター、関達治 キングモンクット工科大学トンブリ校・学術顧問、行宗安友 タイ国立科学技術開発庁/金属・材料技術センター・コーディネーター、大崎満 北海道大学・教授より、ASEANの現場から見た日ASEAN科学技術イノベーションについての報告を頂きました。
総合討論では、オールジャパン体制の構築に向けて、
- 「顔の見える」日ASEAN共同研究推進
- 日ASEAN科学技術協力や教育研究に関連する我が国の官学協力連携体制の強化促進
- 日ASEAN科学技術イノベーション政策への提言
- ASEANにおける持続可能開発研究の普及・促進
- ASEANにおける産官学連携チャンネルの開拓
を議論のポイントとして、活発な意見交換が行われました。
参加者は本シンポジウムを通じて、日ASEANの科学技術・研究教育事業の現状と問題点についての認識を共有しました。JASTIPは、日ASEAN科学技術協力におけるオールジャパン連携体制の実現を支援するプラットフォームを構築することにより、研究者や研究組織、研究開発や人材育成に取り組む関係府省や民間セクター等と協力して情報の共有や蓄積を行なうこと、また日ASEAN科学技術イノベーションに関する政策担当者との対話を促進することの重要性を、改めて確認しました。